君は今、燃えている。
7 年目にして社が受注した Y 社の 「ドキュメント統合管理システム」のプロジェクトリーダに任命されたのである。
プログラマとして 3 年、数人のプログラマの面倒を見る形での SE 兼プログラマとして 4 年のキャリアを持つ A 君としては、同期のトップを飾る本格的プロジェクトリーダである。
A 君は早速、営業活動経緯やプロポーザルを調査しユーザヒアリングをも重ねプロジェクト計画立案 ( プロジェクトプランニング ) を実施した。
何度かの手直し後、会社のトップおよび関係部署の承認を得ることができた。
厳しい予算ではあるが SE クラス 3 名及び段階的な 9 名のプログラマ技術者によるプロジェクトである。その能力を高く評価している腹心の SE である C 君の参入も上司の配慮で実現でき、まずは順調なスタートがきれそうである。
次にプロジェクト体制および SE 各人のスキル概略を示しておく。
SE | キャリア | 性格ほか | |
---|---|---|---|
A | プログラマ | 3 年 | 研究熱心、上司の受けが良、ユーザ信頼が有 遊びも好き |
SE | 4 年 | ||
B | プログラマ | 5 年 | 経験重視安全型のベテラン、目立たない、残業も多い |
SE | 7 年 | ||
C | プログラマ | 3 年 | チャレンジ型 ( 前向き ) 、力量以上のことを言うことが多い、最新技術が大好き |
SE | 3 年 | ||
D | プログラマ | 3 年 | 現代の申し子、言われたことはそつなくやるがそれ以上は考えない、会社での人間関係が嫌い |
SE | 1 年 |
プロジェクトリーダとはいえA 君は重要な SE 戦力でもありプロジェクト管理とともにシステム設計、ユーザとの調整もキー・パーソンとして活動しなければならない。したがって、各サブシステム単位での進捗フォローなどのプロジェクト管理はサブリーダーに委任することにした。
不意の仕様追加
プログラム機能分割、データベース設計、画面設計がほぼ終了しようという時期にユーザより検索手段に関して次のような要望が出された。
現行仕様の検索方式である文書タイトル、作成部署、作成年月日に加えて、文書内容から類推するキーワード検索を実施したい。
<キーワード検索>
数百のキーワード辞書 ( 人事、工事、経理、予算など ) を設定し、利用者の指示によりそのいくつかのドキュメントをリストアップする。
この仕様追加はシステム全体に大きく影響しそうである。各サブシステムベースでの変更内容を列記すると次のようになる。
ドキュメント登録系・・・ | 登録するドキュメントの文章文脈を調べキーワード辞書と照合しながら合いたしそうな最適なキーワードをいくつか選定しておく。 |
---|---|
ドキュメント検索系・・・ | キーワード検索画面を設定し文書検索、表示、出力を行う。 |
データ保全系・・・・・・ | キーワード辞書の作成更新。 |
データーベースの見直しなど設計レベルでの手戻り作業も必要となる。
聞けば、この要求はすでに営業活動の時点で話が出ており、予算等のかね合いでペンディング扱いとなっていた。ある程度の追加予算が期待できるにせよ納期厳守のままでこの仕様の取込みは余りにもリスクが大きい。各 SE の意見も収拾がつかない。
< B 君>この時点での仕様追加は拒否すべき。そもそも文脈を探って合致するキーワードを見つけるなど技術的にも簡単な話しではない。大幅な追加予算と納期延長を吹っかけて客をあきらめさせよう。
< C 君>ユーザが必要としている機能を取込めないシステムなど開発しても意味がない。有効に使われ、感謝されてこそのシステムである。無理な予算・工程・技術大いに結構、ますますファイトがわく。全面的にチャレンジしよう。
< D 君>よくわかりません。リーダにまかす。
A 君は客先ヒアリング、営業部の立場等を配慮し、熟考の末まずプロジェクトメンバーに次の指示を与えた。
一方、ユーザへは技術的な面からの使用の絞り込みを実施し次の提案をした。
ユーザは了承し、仕様追加問題は一件落着した。
さらに、社の研究開発グループに将来的に大きなマーケットが予測できる 「キーワード文脈全文検索」の手法解明を提案した。
「予定どおりです」の真意
プロジェクトも佳境に入りいよいよ各サブシステムの結合試験の工程に突入した。
進捗フォローは原則として週報により実施しているが、 B 君のグループからは特に問題も提示されることなくいつも 「予定どおり」で報告されている。
C 君からはつまらないことも含め何かと問題を提起されているが、どうにか間に合いそうである。
D 君のグループは A 君自身が積極的なフォローをしており、状況は把握しており問題はない。
しかしいざ結合試験を実施したら B 君の登録系サブシステムを中心にトラブルが続出し、検索系へ一歩も進めない状況である。そのいくつかと B 君の反論を示しておく。
A 君は形式的なシステムレビュー、進捗フォローを悔やむも次の対策を打ち出した。
2 週間の遅れ程度でどうにか取り戻せたが、年配者 B 君への遠慮がとんだ事態を招いてしまったと後悔しきりである。システムはどうにか見られる段階まで完成したが、ユーザとのマスタセットアップの問題などもう一波乱、二波乱はありそうである。
プロジェクト管理の教訓
さて、タイムインターメディアも常時、自社事業も含め大小 70 〜 100 程度のプロジェクトが走っている。
EC Web 構築、ナレッジコミュニティ、情報ポータル、ネットワーク/セキュリティ構築などで、さらに業種業界も多岐に渡り、また作業範囲もビジネスデザイン、開発 ( Zope、 Java など)、ライフラインケア、プロモーションなどシステムライフソリューションのあらゆる局面に及んでいる。
プロジェクト管理はユーザ要求、将来を予測した成果、メンバー、納期、予算そしてリーダセンス ( 技術プライド ) のバランスでありこれらの高度なトレードオフで成立する。
タイムインターメディアはライフソリューションの各局面に対応した組織構成にあり、プロジェクトのこの高度なトレードオフを組織ごとの異なる価値観で運営している。
ここで、願望も込めてタイムインターメディアの自慢をひとつ。
システムに関わるあらゆる局面のプロジェクトを実際に運営して一気通貫の技術を発揮していること、いわゆるワンストップソリューションが当社の持ち味である。
当然、日々トラブルもあり赤信号の点滅するプロジェクトもでてくるし、また運用中のシステムにもとんでもない異常が発生する。そのときも当社の強みが発揮される。
まるで白血球が体の不具合をなにごとも無く退治するごとく、ライフソリューションを構成するあらゆる部門の技術が自然に結集してさまざまな観点から検討、最適なトラブル解消を見つけ出すのである。