さて、一通り営業の重要さを説明したところで、今回は実際の営業の実態についてお話しましょう。
筆者自身が業界他社から、ちょくちょく聞く話に「チョイ悪営業マン優秀説」があります。
「あの人普段何やってるかわからないんだけど、仕事をちゃんと持ってくるんだよねー」とか「ズル休みばっかりしてるのに、なぜか顧客に受けがいいんだよ」とか「開発サイドから見るとチョーいい加減なのに、なんで顧客は俺より彼を信用しているのぉ」とか。
なぜ、こんなことが起きているのでしょうか?
原因は 2 つあると考えています。
ひとつは、現在の日本では見えない営業行為が主流になりつつあるからです。昔のような具体的な商品やサービスを売るという取引から、最近は、商品を含めた価値を売るということが大切になってきました。
例えばアマゾンで本を買う人は、本の商品価値を求めて購入するというよりも、豊富な在庫という価値と、家まで届けてくれるという価値に重きを置いている人が多いことでしょう。
価値というものは、基本的には見えないものです。ほかにも、ブランディングやワンストップ、ナレッジ、業務フローマッチングなど、IT 業界は目に見えないものだらけです。そもそも過程が見にくくなっており、企画やマーケティングと違いアウトプットが少ない営業は、何をやっているかを知ることが難しいので、客観的な営業マン評価がしにくいといえます。
そしてもうひとつ、しかも大きな原因があります。それは会社側の評価・評定です。
前回優秀な営業マンほど、長い取引やパートナーシップを作るのがうまいとお話しましたが、では会社側の優秀さの尺度となっているかというと、これは、はなはだ疑問です。どうしても会社や他部署は、営業を年間の取引金額の大きさで判断しがちです。しかし、取引金額は、その人の優秀さを示す指標ではありません。偶然流れてきた一回きりの仕事が、意外に大きな金額だったりすると、もう大変です。優秀な人ほど長いスパンで物事を考え仕事をしようとしますが、それは評価として認められず、そこでフリクションが発生します。
すると、どうなるか?
会社内での評価とすりあわせ、その評価内で行動するようになります。つまりズルをするようになるのですね。
前回お話したように「落としどころ力」に優れた営業は、すでに解決策と、何をすればいいかを押さえています。もともと少時間で決着する力を持っているところに、さらにそれ以外の無駄と思われることをなるべくしないようになります。すると、自然に時間は空いてきますので、会社を休んだりズルするようになります。こうなると「落としどころ力」というのも諸刃の剣です(笑)。
では給料をあげてもっと仕事をさせればいいのにとも思いますが、結局評価が上がらなければ社内他部署の非難が轟々ですし、IT 業界は技術者上位の世界なので、なかなかそうもいきません。結局これは企業が非技術者系評価をどう考えていくかというところに集約されていく問題ですね。
以上のように、チョイ悪な優秀営業マンは実際少なくありません。しかし、素行だけチョイどころか大悪で仕事が全然できない営業が多いこともお忘れなく。