WCCI2022にて,口頭発表をしました.その内容について,報告します.
実世界の最適化問題は,2つ以上の相反する目的を有することがあります.その目的間の最適なトレードオフを近似する解集合を獲得することを多目的最適化といいます.例えば,車の設計においては,価格,燃費,加速性能,快適性,安全性など多くの目的について最適な解が要求されます.しかし,全ての目的が最適値となる解は存在しません.価格が最適な車は快適性が最適ではなく,快適性が最適な車は価格が最適ではありません.このとき,目的間の最適なトレードオフ関係を代表する多様な解を求めようとするのが多目的最適化です.
実世界の最適化問題は,幾つかの良好な解が最適化前から分かっている場合があります.例えば,車の設計においては,市場に出ている製品はある視点,ある目的の重みづけにおいて最適な解のはずです.あるいは,2回目以降の最適化では,前回の最適化結果が存在しているはずです.それにも関わらず,一般的な多目的最適化は,ランダムに生成した解を初期解として探索をスタートします.幾つかの良好な解が分かっているならば,それらを初期解として最適化をした方が良い結果が得られる可能性が高いはずです.しかし,そのようなアルゴリズムは(自分が調べた限り)存在しません.
幾つかの既知の良好な解が与えられた環境を想定した多目的最適化アルゴリズムを提案しました.
遺伝的アルゴリズム,差分進化,分布推定アルゴリズム等の方法が想定環境に適していないことを明らかにした上で,応答曲面法による推定を利用した提案法が想定環境において良い結果が得られることを明らかにしました.
提案法は,単純な問題であれば良好な解が10個しか存在しなくとも高い最適化性能を示し,難しい問題においても解の数を増やすことで対処できることを明らかにしました.この研究成果は,特に1つの解の評価にお金や時間がかかる高コストな多目的最適化問題において特に有効であると考えられます.
今後取り組んでいきたい作業が山のようにありますが,優先順位をつけて,1つ1つ着実にこなしていきたいと思います.こちらに書いていない研究,構想段階の研究もあり,そちらも作業を進めていきたいと考えています.
発表論文と公開コードは以下です.