株式会社タイムインターメディアと北海道大学が共同で開発を行っている、統合情報共有プラットフォーム『Unire(ユニーレ)』。 北海道大学の新たなポータルサービスとして、2025年4月に、北海道大学の全学生と教職員向けに導入が予定されています。
PCブラウザ版とオリジナルのスマートフォンアプリのいずれにも対応した『Unire』は、学内認証、学務システムなどの既存システムと連携し、学内情報を一元的に管理します。 これにより、大学内のさまざまな情報資源へのアクセスがより容易になり、所属する学部・大学院/部署等や学生/教職員などの属性を超えた情報共有を円滑にします。
『Unire』は、あらゆる情報への入口を一元化した上で、学生や教職員が取捨選択できる仕組みを構築し、必要なお知らせを大量の情報の中に埋もれさせることなく、確実に取得することができる環境を提供することを目指しました。
スマートフォンアプリ版『Unire』でも、それぞれの学生や教職員が必要とする情報に最適化された画面から、様々なジャンルのお知らせへと即座にアクセスできます。 複雑な手順を踏んでいた災害時の安否確認も、プッシュ通知に対応。手順の簡略化、回答率の向上を図りました。
そして、日々の業務に追われる教職員にとっても、事務所掌や担当学生所属など、大学の組織や権限、業務に応じた電子申請を受け付けるなど、様々な対応が行えるよう、システム環境を整備し、発信作業の負担を大幅に軽減しました。
このように『Unire』は学生のみならず、教職員にとっても使いやすい、今までになかった新たな形のプラットフォームとなっています。
近年、多くの大学で学生専用ポータルサイトが導入されていますが、北海道大学では課題や要望に合致するシステムが見つからず、教職員の皆さまは対応に頭を悩ませていました。 さらに、規模の大きな大学ならではの課題も加わり、状況は一層複雑化していました。
今回、統合情報共有プラットフォーム『Unire』の開発に至った背景やシステムの特徴、さらには今後の展望について、北海道大学(以下、北大)のDX業務推進室室長・横澤氏、本プロジェクト内に設置されたタスクフォース(TF)の皆さま、そして開発を担当した株式会社タイムインターメディア(以下、TIM)の奥村氏と柴田氏にお話を伺いました。
北大 横澤氏:北大は学生数や教職員数が多いこともあり、学内での情報共有手段が多岐に渡り煩雑な状況でした。そこで、情報を一元化して整理したほうがいいのではないかと考えたのが、『Unire』開発のきっかけです。
さらに、学内では大量の情報が行き交うため、学生や教職員から「必要な情報がどこにあるかわからない」「どの通知を見たらいいのかわからない」といった声も多く寄せられ、このことも大きな課題だと感じていました。
学生、教員、職員といった立場や所属する部署などによって様々なニーズがありますので、それらをどのようにひとつの仕組みにまとめていくかということも悩みました。
北大 奥野氏:多岐にわたる業務を統一し、学生側と教職員側の2つの側面から利便性を考える必要があるので、システムの仕様を決める際にも、それをプラットフォームに反映させる難しさを感じました。
北大 安達氏:北大はキャンパスが非常に広く、33の学部や大学院があり、人文学系や社会科学系、医学系など全ての領域をカバーしています。 そのため、長年、各部局(学部等)の特性を生かした取り組みを重視したこともあり、部局ごとに情報伝達方法が異なっていました。
学生への伝達事項においては、紙で配布したり、掲示板に提示したり、メールで送信したりなど、手段にバラつきがあったので、学内で共通化できていませんでした。情報提供する職員の業務量も増えてしまい、無駄な業務も発生していました。
北大 西東氏:私もこれまでいくつかの部局の勤務を経験しましたが、それぞれに文化があり、業務の運用ルールも異なっていました。 部局ごとに独自のプラットフォームがある場合もあれば、そうでない場合もあり、大学全体で統一された情報共有プラットフォームの仕組みが存在していない状態でした。そのため、異動のたびにその部局の独自の習わしを一から学び直すという流れでした。
学内で情報伝達が標準化され、異動があっても同じフォーマットを活用できるのは、非常に大きな進歩だと感じています。
北大 奥野氏:災害対策として、安否確認システムを導入していましたが、安否確認メールの回答率が低いという課題がありました。
メールを開封しないと回答できないため、返信が1日以上遅れるなど、学生側のレスポンスが十分でなかったことも課題でした。そこで、これらの課題を解決するために、スマホアプリで回答できる仕組みにしてみたら良いのでは?というアイデアがあり、TIMさんにプラットフォームとして仕組みを作っていただきました。
TIM 奥村氏:弊社は、過去に多くの大学のポータルサイトやポータルアプリを開発した経験があります。
そのノウハウを生かしながら、ヒアリングを丁寧に何度も繰り返し、各部局の業務のギャップを埋めるポイントを洗い出し、必要な機能を選定しました。
北大さまとヒアリングを重ねていくうちに、大学の組織の複雑さが明らかになり、単にシステムを導入するだけでは目的を達成できないと実感しました。どのようなデータ構造、システム設計を経て、必要な機能を組み込むべきかを細かく確認しなくてはならないため、要件定義のすり合わせを通常よりも長めの5カ月間確保しました。そのため、開発と要件定義を並行して進めるのは大変でしたね。
北大 橋田氏:要件定義の過程では、各部局から「この機能が欲しい」「こういうカテゴリーが欲しい」など、要望を受けることが多々ありました。そこで、その機能が実際にどの程度必要かを皆さんとじっくり話し合い、相談しながら決めたので、時間を要したと思います。
北大 西東氏:学内でも現場の意見を直接聞き取ることが必要だったので、何度もヒアリングを実施しました。
実際に部局からの要望を聞く会を設け、ファシリテーターを担当したのですが、考えていることが千差万別ですし、さまざまな経験を持っているので、それを取りまとめるのは難しいと実感しましたね。
北大 橋田氏:これまでバラバラだった情報伝達方法を整理するには、単にシンプルなプラットフォームを構築するだけでは不十分だと感じました。情報伝達をどのように標準化するかを検討しながら、新しいプラットフォームを活用して情報を統合するプロセスは、想像以上に難しいものでした。
TIM 柴田氏:これらの要件を実現するために、開発側は最新技術を積極的に取り入れました。
『Unire』の開発技術は、『Flutter(フラッター)』*を活用し、導入後の変更、ご要望にも柔軟に対応できる設計を意識しています。
*iOS・Android・Web全てに共通した優れたUIを一度に作れるモバイルアプリ用のオープンソースのフレームワーク
北大 横澤氏:「やりたいことがあるが、どうすればいいかわからない」という私たちの要望に対し、TIMの皆さまは多くのアイデアを提案してくださり、実現に向けて調整していただきました。
北大 根本氏:これまでウォーターフォール開発の経験がありますが、アジャイル開発はあまり経験がありませんでした。そのため、アジャイル開発のキャッチアップには少し苦労をしました。要件定義の時間も要しました。それでも、私から打ち合わせをお願いした際には、すぐに日程を調整していただき、何度もリモートで話し合いの機会を設けていただいたので、大変助かりました。
北大 橋田氏:「情報が多すぎて必要な情報が埋もれてしまう」という課題に対して、SNSに着想を得た手法をご提案いただいたことは、私たちにとって斬新な発想で驚きでした。 ユーザーが見たい情報だけを選んで確認できる仕組みは、これまでのポータルサイトにもなかったので、画期的だと思います。
北大 横澤氏:TIMさまが何度も話し合う機会を設けくださり、北大の現状を的確に理解していただけたことは、大変ありがたく、心から感謝しています。
北大 根本氏:綿密なヒアリングを通してさまざまな提案をいただいたことで、『Unire』が私たちの理想的なものになっていると実感しています。
北大 横澤氏:『Unire』 を使ったお知らせや電子掲示板への情報配信や、各種既存システムとのデータ連携等を組み合わせることで、学生や教職員の皆さんに学内全ての情報へアクセスする際の入口として使っていただけるツールとなることを目指します。
北大 根本氏:各部局で使用中のシステムを併用しながら、段階的に情報への入口を『Unire』に集約したいと思っています。『Unire』を「使いやすいから使いたい!」「これまでの情報共有のストレスが減った」と感じてもらい、学内で信頼され、喜びをもたらすプラットフォームに成長させていきたいです。
タイムインターメディアは、お客さまと共同開発したシステムを「共に育てる」という方針を掲げています。『Unire』の運用開始後、学生や教職員がどのように活用し、どんな反応を見せるのか、今から期待が高まります。
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