山形大学では、2015年に学生ポータルアプリ「YU
Portal」のサービスを開始。このシステムをタイムインターメディア社が開発致しました。学内認証・学内教務システムなどと連携し、各学生にダイレクトに情報発信ができるシステムです。
年々新機能を拡張する中、昨年新たに『学修時間記録機能』を開発し、2022年秋より運用がスタートいたしました。このYU
Portalは今では山形大学ではなくてはならない、学生と大学を結ぶコミュニケーションツール及び学修ツールへと進化を続けています。
2015年頃、山形大学では、学生に情報発信する際は、主に学内の掲示板や分厚い履修案内などを冊子で配布していました。
学生は、日々の大学からのお知らせや休補講教室変更などは掲示板を確認する必要があり、情報の一元化・紙による配布物は大学の大きな課題となっていました。
一方で、出席情報と成績の相関関係など学生の動向を分析し、学生生活満足度向上への対策が急務となっていた時期でもありました。
そこで、学内の教務システムから学生情報データ(基本情報・学部・学科・カリキュラムなど)のデータと別システムで稼働していた出席管理システムの情報を一つにまとめ、学内認証を通し、学生専用のポータルアプリ「YU
Portal」を弊社にて開発。
学生は、YU Portalをアプリストアからインストールし、学内認証から発行されたID・パスワードでログインすることができます。ログイン後、学生の学部・履修情報に紐づいたお知らせや時間割が表示され、掲示板に出向くことなく情報を得ることが可能となりました。また、アプリのPush通知でお知らせの配信が行われるため、学生はタイムリーに大学からの情報をキャッチできます。
当初、学生ポータルアプリ「YU Portal」は、時間割情報、休補講情報、教室マップ、クラス分け情報、お知らせPush通知といった限られた機能でスタートしました。その後、基盤力テスト、授業評価アンケート、beacon出欠管理、安否確認、コロナ対策では座席二次元コード読取による出席取得機能などを拡張。
管理側機能では、出席情報の閲覧・編集・出力、お知らせ情報の作成・未読・既読管理、アプリの起動管理から、テストやアンケートの作成、回答の統計なども展開するなど、大学の取り組みや世間のニーズに合わせて年々進化を続けています。
そして、2022年には新たに「学修時間記録機能」を拡張しました。
YU Portalの責任者である山形大学・教授・千代勝実氏は、学生が自ら目標を定め、「自ら学ぶ自立性を確立させる」ことを目的とする基礎学習過程「みずから学ぶ」を2016年から実施しています。
学生が「みずから学ぶ」の自立性を確立するために、学生自身に目標を決めてもらい、それに対して授業外で学修の時間をどれだけ設けられたか、そしてその行動への自己評価を学生一人一人と共にExcelで管理し、それを元に指導を実施。授業の評判は良く、履修希望者が増加していました。
学生の生活スタイルに合わせた仕組みで、学生が更に自身の目標と向き合える方法を検討する中、既に運用されているYU Portalの新機能として授業の取り組みを搭載した「学修時間記録機能」を拡張し、2022年後期よりこの機能を活用した授業がスタートしました。
学修時間記録機能の流れ
①YU Portalの「みずから学ぶ」機能を選択(※対象者のみ機能表示)
②学生は目標を定め入力
③教員と学生で目標の確認・修正
④学生はその目標に対して学修する予定時間を記録
⑤学生は学修を実施した時間を記録
⑥学生は目標に対してのコメントなど日々の記録
⑦教員はフィードバックを入力
⑧学生は目標・活動に対しての自己評価点を登録
YU Portalの新機能「学修時間記録機能」を取り入れたことにより、「みずから学ぶ」が学生同士でおすすめの授業となるほど学生の満足度は向上しました。
導入当初より、山形大学の学生ポータルアプリ「YU Portal」の開発から機能拡張まで一貫して携わらせていただいていることがタイムインターメディアの誇りです。
これからも教育ICTの発展に弊社の技術で貢献できるよう、日々進化してまいります。
山形大学では、学生がスマートフォンで履修案内や休講情報などを閲覧できるポータル「YU Portal」を活用しています。このサイトには、学生の学修時間や活動状況を記録し、学びの見える化やコーチングにも活用される機能が集約されています。YU Portalは、学生の目標達成をサポートするためのツールとして、情報伝達だけでなく、同大学の千代教授が担当する「みずから学ぶ」という授業を含め、幅広く学生に活用されています。今回、山形大学の千代勝実先生と、開発会社であるタイムインターメディアの柴田知久氏に、YU Portalのこれまでとこれからについてお話を伺いました。
千代先生:2015年から、大学から学生への情報提供をワンストップで行うために、YU Portalの開発と運用をしています。具体的には、履修登録案内や出席・休講情報、クラス分け情報などを配信しています。それ以前は、分厚い履修案内や時間割などの冊子を複数配布し、また、ウェブページや掲示板にお知らせを掲示していました。しかし、学生にとって、さまざまな冊子やメディアに分散した大学からの情報を全て把握することは負担であり、自分にとって必要な情報を見逃してしまう恐れもあります。しかしYU Portalを導入したことで、一人ひとりにカスタマイズされた情報を提供することができるようになりました。新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、机に貼った二次元コードを読み込んで、だれがどこに座ったかの着席情報を登録することで、濃厚接触者の洗い出しにも役立ちましたね。
柴田:学生ポータルは、この10年ぐらいで主流になってきています。山形大学様においては、当初、教務システムという基幹システムがありました。しかし、このようなポータルはなく、学生がスマートフォン上で、ワンストップで自分の時間割や出席情報が見られる仕組みを作ってほしいというお話をいただき、簡易ポータルとして作ったのがこのYU Portalの始まりです。
最近では他大学でも、学生のGPAや成績などの個人情報を連携させ、ポータルには各大学オリジナルの機能を開発し運用して頂いております。山形大学様では、ポータル上で基盤力テストを行ったり、学生が授業を評価できるアンケート機能を追加したりと、機能を拡張しつつ幅広く活用していただいています。
千代先生: 私は、「みずから学ぶ」という授業を担当しています。この授業では、学生が自ら設定した目標とそれを実現するための計画に沿って、学修や課題に取り組むことが求められます。昨年度、この授業で活用するために、YU Portalに学修時間や日々の生活状況を管理できる学修時間記録機能を追加してもらいました。そして、学生が目標に向かって取り組んだ時間を毎日入力してもらい、教員がその記録をもとにメンタリングや成績評価を行っています。YU Portal内で教員と学生がメッセージのやりとりも行えるようになっており、学生自身の自省にも役立っていますね。
千代先生:学修時間記録システムの導入について、学生が面倒くさがる可能性があるという懸念があったものの、これまで学生が積極的に取り組んでいる様子が伺えます。また、「みずから学ぶ」においては、継続が非常に重要です。例えば、「TOEICのスコアを上げる」という目標を設定した場合、結果が出るまでには時間がかかります。スポーツでも同じですが、結果が見えない時期でも継続して努力を続け、ある日急成長を遂げることがあります。そのため、結果がすぐに出なくても、積み重ねた時間に自信を持ち、途中で投げ出さないようにするための仕組み作りが必要です。YU Portalによる学修時間の管理は、このような継続的な取り組みに向けたツールとして、有効に活用されていると言えます。
YU Portalには、できなかったときは“言い訳”をして、リスタートしてもらえるシステムを構築しました。現代の学生は多忙です。バイトやサークル、ほかの授業での課題に追われて、取り組めない日もあります。そんな日には「今日はこういう理由でできなかった」とそのまま記録して、“言い訳”ができることで、できなかった自分を追い詰めずに「今日はできなかったけど、また明日から再スタートしよう」と前向きに取り組めるようになったと思っています。
YU Portalを活用した授業は大変人気です。先輩から後輩に「目標を達成したいなら『みずから学ぶ』の授業がおすすめだよ」と言ってくれている場面を見ると、大変うれしいですね。
千代先生:「みずから学ぶ」は最初、手書きのスケジュール表やExcelを利用して取り組み状況を報告してもらっていました。それをYU Portalに落とし込むまでには、試行錯誤を繰り返しました。学生がどのようにYU Portalを使うのかをイメージし、「学生だったらこの画面は使わないだろう」「これなら使いたくなるかな」と修正と改善をしながら作り上げていきました。
柴田:山形大学様が「やりたい」と考えていることを、どのようにシステムで実現すればいいのか、学生の主体性を向上させるシステムにするためにはどうしたらいいのか、何度も相談を重ねながら機能を開発していきました。
とはいえ、既に「みずから学ぶ」の授業形式は確立されていたため、アプリは従来の取り組みをサポートする形でスムーズに制作が進みましたね。新たなアプリを導入する際には「アプリを導入するから、こんな学びができる」ではなく、「こういう学びをするためにこの機能を備えたアプリが欲しい」というように目的を明確にすることが大切だと思います。
現在では教員からのフィードバックを手で行っているため、それらをいかに効率化できるかが今後の課題です。
千代先生:これからの時代、学生に求められるのは「自分で必要だと思ったことを自分で学ぶ力」だと考えています。大学卒業後も専門分野だけではなく、生活や家族、地域についての学びが必要不可欠です。そして、そのためにはなんらかの計画と振り返りが必要です。上手に時間を使い、継続するための工夫がなければ、自律的に学んで行くことは難しいでしょう。
また、学生はそのための技能を高校までの間に学んでいません。そのため、大学が「自分で考え継続する力」を教育する場となる必要があります。YU Portalの活用によって、自律的な学びの基盤を作り、目標達成の経験を積んでほしいと願っています。「自分が目標に向かって取り組んだからできた」と成功体験を積んでいけるようないいサイクルを作っていきたいですね。
今回は、山形大学で使われているYU Portalの学修時間記録アプリに込めた思いを、山形大学の千代教授と、開発会社であるタイムインターメディアの開発者の柴田氏に語っていただきました。YU Portalを活用した学修は、目標達成を経験させることで学生自身の自己肯定感を高め、社会に出てから役立つ人間性を育む素晴らしいプログラムでした。今後の山形大学の取り組み、同学生のさらなる活躍に目が離せません。
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