日本では人間を、文系、理系に二分して考える傾向がある。そして、コンピュータ、インターネットに関する技術的な仕事をするには、理系でないと無理との考えが強いようだ。
大学の就職関係の教官や職員の間にさえこんな考えがあって、とても驚く。コンピュータというと、技術計算とか、電気に詳しくないといけないという思い込みが未だに存在するようだ。
コンピュータというと、リアルな 3 次元グラフィックスの世界を想像したりするのだろうか。確かに昔は、3 次元グラフィックスを実現するには高価なコンピュータを使い、自らプログラムを作らなければならなかった。しかし、今では、コンピュータの性能が上がり、数万円のゲームマシンですら高度な 3 次元グラフィックスを楽しめる時代になった。
実は、3 次元グラフィックスはとっくに斜陽産業になっていて、一世を風靡した企業のほとんどは姿を消した。グラフィックスの医療分野への応用はまだまだあるだろうが、あまりにも一般化してしまい、利益が上がらない分野になってしまった。美しいくらいでは、もはや誰も評価しない。
実際にコンピュータの仕事で圧倒的に大きい分野は、ビジネス・アプリケーション開発である。物の販売管理・在庫管理・物流だったり、金融関係だったり、広告などの情報発信など、いわゆるビジネス分野だ。
これらの仕事では、コンピュータの知識・経験以上に、それぞれの分野の専門知識が強く望まれる。多くのシステム開発では簿記の知識があると有利になる。大量の帳票を発行し処理するので、簿記の知識がまったくなくては、作ったシステムが使い物になるのかどうかさえ判断できない。
コンピュータは、基本的に個人や組織の活動を支えるために存在する。つまり、作られるシステムの多くは経済活動の一部を処理するので、経済学、経営学、商学などの文系と呼ばれている分野の知識が非常に強い武器になる。
理系、文系という考え方自体が不思議な考えである。コンピュータ、インターネットは、人間のあらゆる活動を支えるために使うのだから、人間系に強いことこそ重要だ。