知識や技術を習得していることは、仕事を早く、確実にこなすのに重要な役割を果たす。そのために、本、雑誌、インターネットなど、さまざまな手段を使って勉強することは必要だ。
しかし、ひとつ考えて欲しい。本に書いていることを、正しいと思って、そのまま利用していないだろうか。印刷物に対する盲目的信頼はないだろうか。
学校で習った内容でさえ修正が加わることもある。たとえば、鎌倉時代は 1192 年に始まったと多くの人は教わったが、今では諸説あって、良く分からないというのが妥当な意見らしい。
IT 技術関係ならそんなに誤りはないだろうと思うかもしれないが、出版を急ぐあまり充分な校正がされておらず、ミスが存在する場合がある。翻訳マニュアルを見てその通りに操作してもどうしても動作しないので、やむなく元の英文マニュアルを見ることが時々ある。
本などで得た知識を、そのまま使って仕事を完成させても、もし、その知識が誤ったものであったら誰の責任になるであろうか。本を書いた人にも少しは責任があるだろうが、何も考えず、確認もせずに利用した方の責任が重い。
自分で作ったもの、行なったことは、自分で責任を取らねばならない。作った物は、本当に良いかどうか、きちんと検査しなければいけない。でき上がった製品、プログラムなどは、検査した範囲だけしか保障はできないものである。
仕事でも、様々な事故が起きる。そのとき、どこかから持って来た知識で、内容をしっかり理解していないことが原因でトラブルが発生したら、その修正、対応は悲惨なことになる。
本番で使う前に、みっちりテストして有効性を確かめることが必要だ。本を読んだだけで理解したと思っても、それはまだ身についた知識ではない。実際に手足、頭を使って、実証してみなければいけない。納得するまでテストしてから使うべきだ。
知っているつもり、分かったつもりくらい恐いものはない。ペーパーテストは分かった程度で大丈夫だが、現場、現実はそうはいかない。