ベンチャーという言葉にどういうイメージを抱くのだろうか。先端技術を追いかけて、格好良い仕事と思うらしい。あるいは、インターネット上だけのバーチュアルなことばかりを行ない、虚構をうまく利用して金を稼ぐイメージもあるようだ。
当社も、世間からは IT ベンチャーと言われている。しかし、内部にいると、そういう感じは全然ない。先端技術は飯の重要なタネだから追いかけるが、実際の仕事は、現実社会に深く関係し、日程に追われ、バグ潰しに追われ、様々なミーティングに翻弄される日々だ。
しいて言えば、大企業が企業の体力勝負で行なうような仕事ではなく、まだまだ小さな市場で、かつ将来性があるかも知れない個所に、果敢に、あるいは無謀に食いこんで行く。大きな市場になってしまえば、必ず大企業がやってきて、市場は荒らされる。そして、最後は仕事そのものがコストの安い海外へ流れる。
ベンチャーは、世の中ではまだ認められないようなことに手を出し、新しいビジネスに挑み、苦労をする。新しいことにはリスクが伴うので、失敗も多い。失敗したら、さっさと会社を処分することは多い。
ベンチャーにも色々なタイプがある。会社全体を、新しいタイプのビジネス、極端な場合はある新製品1つに社運をかけることがある。成功すれば、莫大な利益が転がり込むが、そう簡単には成功しない。場外ホームラン狙いは、ほとんどの場合三振に終り、会社も消える。
当社は、ホームランも狙うけれど、着実にバントも行なうので、様々なタイプの人がいる。多種多様の技術者集団だから、社内だけでも様々な技術が集まっている。集まった技術を合理的に運用できれば良いのだが、ベンチャーの常で、組織の整備はどうしても遅れている。
一発勝負型でないベンチャー企業は極めて少ないが、あえてそういう方法で創業以来やってきた。ホームランで点を取るよりも、常時満塁にしておき、じわじわと点を取り続けようとする、およそベンチャーらしくないベンチャーである。