題名:ダメな統計学
悲惨なほど完全なる手引書
A5、185項、本体2200円
2017年1月20日 発行
勁草書房
https://www.statisticsdonewrong.com/ (オリジナルサイト)
http://id.fnshr.info/2017/01/20/sdw-trans-publ/ (日本語サイト)
最近、世の中、統計学が流行っているようである。
確かに昔と違って、大量のデータもさくっと処理できるだけの計算機パワーがあり、様々な分析、予想、判断などに実際に利用できるようになった。
そして、ビッグデータ、人工知能などのためには、統計学は当然知っていなければいけない。
ということで、統計学を勉強と思ってではなく、世の中、どう考えてもオカシイ、誤った統計の利用、誤用、乱用、悪用が目に付いていたところでこの本が出版されたので読んでみた。
第一印象は、結構読みづらい本であった。
日本語訳があまりよくない。元々内容がねちねちしたところがあるのは当然なのだが、それゆえしっかりした、かつ読みやすい日本語にして欲しいところだが、その当たりはかなり改善して欲しいところだ。英語がすらすら読めるのならば、英語で読むべきかもしれない。
内容は、論文などでの統計の利用がいかに正しくないかが書かれている。
世界の主要な論文掲載誌に載る論文も、1/3程度は統計的におかしなことを書いており、結論が違っているとか。
とくに、医学、医療関連、つまり治療の有効性の判定などでの誤りの指摘が多い。
医療系の世界では、統計の誤解だけでなく、どうやら政治、ビジネス的な問題がからんで、世界中どこもドロドロなところがあると。
統計とくに検定についての言及が多いが、そのあたりを正しく把握しようと思うと、一通りの統計学の知識が必要になる。
いろいろ統計的に誤った実例が載っている。とくに、薬で、有効と認定されていたのが無効と判定されてしまったいきさつなどの紹介もある。
こういう研究は、直接的な成果に結びつかないので、関心を持たれることがないが、統計にきちんと基づいて論文の査読がされれば、誤った結論を出してしまうことが相当減少することは確実だ。
一部の論文誌では、査読に統計、検定の根拠を示すのを義務化するのも進み始めたみたいだ。
本書は、さくっと読んで、しっかり統計学を勉強するのが重要だ。
なお、本書の内容であるが、英語も、翻訳もネットでフリーで読むことができる。