恵存(けいぞん、けいそん)村上雅人 と書かれてあり、恵存とは本などにサインするときに使われる言葉で、「お手元に保存していただければ幸い」(デジタル大辞泉)という謙譲語である。
実は、村上雅人著作本にサインをいただいたのだのだが、村上雅人って誰だか知っている人は少ない気がする。
今回は、この人の本について書く。
ところで、最近やたらと数学、そしてちょっと物理学が流行っている気がする。
10月初めには MATH POWER 2018 という、数学の狂った祭典が六本木の地下で夜を徹して行われ、それに付き合ったのだが、満員御礼の人気なのである。
数学、物理学というと、理工系大学ではだいたい必須の科目であり、そのための書籍も多数でている。
以前、そういう分野の本としてマセマを紹介した。
マセマは、まるで受験参考書のような書き方で説明や演習が載っていていて、これで勉強すれば単位は取れるという謳い文句の参考書である。
でも、大人になってから読むには、どうも受験や定期試験を思い出させるのでよろしくない。
ということで、今回は、受験を思い出させないシリーズ本を紹介しようと思う。
村上雅人著の『なるほど』シリーズがそれである。大学の科目に合わせるという感じではなく、個々の分野をあまりページ数を気にせず、延々と馬鹿丁寧に書いている本である。
残念ながら、あまり本屋で見かけないかも知れない。海鳴社(かいめいしゃ)という、あまり一般の人、技術者が知らないと思われる出版社から出ている。
量子力学は全3巻であるが、延々とシュレディンガー方程式の変形を途中省略や飛躍なく載せている。
演習問題も、普通だったら注意すべき部分と最後の結果だけ載せる本が多い中、本書は演習問題の計算も省略無く延々と書いている。
基本的に、どの分野の本も、そういう感じで説明が続く。
したがって、あまり高度なところまで到達していないのだが、基礎をきちんと理解するにはとても良い本だ。
元々、学生の自習用に丁寧に書かれたようだが、学生にはあまり読まれず、シニアを中心に読まれている、売れているという話を伺った。
世界と真逆なのだが、日本では若い世代の理系離れが進む一方で、数学や物理学に強いシニアが増えているようだ。
今年になっても『なるほど物性論』を出されていて、既刊がなるほどシリーズだけで20冊に及ぶ。
超電導が専門なので、本書には非常に期待が持てる。
※村上雅人氏は、現在芝浦工業大学の学長である。